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killie / 犯罪者が犯した罪の再審始まる
もう10年くらい前から出る出ると噂されていたkillieの初期音源編集盤です。2018年リリース。ついに出た!…ではあるんだけどこのレビューを書くのに1年以上かかってしまっているので、もうついに出た!感薄れてしまいましたか?薄れたよね、ゴメンナサイね。今や音も文章も比較的簡単に後世へ残す為にパッケージ出来る時代にはなりましたが、その分情報の鮮度が落ちるまでのスピードも恐ろしいほど早くなったなと感じます。特に感情に起因するモノ、コトこそその瞬間瞬間で形にしないと後の祭り、思いついたリフはすぐさま記録しておかないと次の日の朝にはもう二度と出てこないものになってるもんです。なのでこの音源のレビューもリリースが決まったことを知ったその瞬間の熱をそのままに書きなぐるべきだったんですが…なんせ俺がこの音源へ期待していた思いとその時間はあまりにも長く、重かったのです。

2005年くらいだったかな…大学生だった俺はorchidやconvergeやenvyに出会って間もなく、ただ音楽友達もいなかったので暇な時間がありさえすればネットでこういったバンドや音源の情報を漁る日々を過ごしていた。とは言っても今とは比較にならないくらい情報量は少なく、もっぱら入り浸っていたのはかの悪名高い2ちゃんねるの、その中でもパンク板やHR/HM板だった。中でも激情ハードコアのスレではたくさんのバンドの情報が得られて、そこで知った名前のバンドの音源は全て買い漁り、それは今でも掛け替えのない情報として俺の中で生きているくらいである。そこにある時期からポツリポツリと名前が現れ始めたバンド名、killie。当時3cm tourやcleanerすら知らなかったし、killieのライブも観ていないのでどんな音楽性なのかすら知らなかったが、なぜだか惹かれた。それも、無性に惹かれたのを覚えている。単純にkillieについて語るレスが「ヤバい!ヤバい!」と熱量高かったからというのもあるだろうし、今思えばkillieが当初から(多分)あえて醸し出していた断片的にしか情報を開示しない謎性というか、そういうものに引っかかったのかもしれない。だとしたら俺はまんまとその戦略に乗せられたことになる。ともかく、その気になるkillieが音源を出す、というのでこれはチェックせずにはいられないな、と。当時まだあったoto recordsのHPで、大手にも流通させるという文言を見たので当時バイトしていたツタヤの社員に「これ買いたいんで入荷できないスカ?」とか聞いていた。もちろん無理だった。アホの極みだ。なので発売日当日、大学の1限をサボって新宿のタワレコへ10時に向かい在庫を確認してもらう。今思い起こしてもこのへんの行動は不思議だ。ライブも見たこと無い、どんな音なのかすら分からないバンドの音源に対してここまですることは当時の俺であっても明らかに変だった。「ああ、午後一で入って来る予定です」とのことだったので、在庫を確保してもらい一度大学に向かい講義を受けてから午後再度タワレコに向かって無事「地下から抜け出したい地下から抜け出したくない地下から抜け出せない」のCDをゲット。その時点でまず装丁に驚く。その足ですぐさま足立区のアパートに帰宅しドキドキしながらCDをコンポに入れ、再生させる。何やら怪しい語りが流れはじめる。おお、なんだかおどろおどろしい雰囲気。何かよく分からないけどイイネ。あ、多分オープニングのイントロトラック的なやつか、なるほどね、次の曲からが本編というかそんな感じなのかな?からの「落書きされた放置死体」。…この瞬間の衝撃は今でも覚えている。ギターリフからなだれ込むように絶叫とブラストドラムが始まり、不穏ながらメロディー感もあるコードが暴力的に掻き鳴らされる。複雑怪奇な曲展開ながら旨味をパンパンになるまで凝縮していて全ての無駄を削ぎ落としながらも全てが開放された約100秒間。俺が当時、正に一番聴いてみたかった音が完全な形でそこにあった。

それからkillieのことをネット上で目を丸くして調べ始める。killieのHPでの大量のテキストもそうだしoto recordsの音源レビュー、2ちゃんねるやmixiでも躍起になって彼らのことを探った。なにやら他に類を見ない過激な論法も多く、人によっては一瞥くれて鼻で笑うようなものだったり、または激しい嫌悪感を催しかねないものだったかもしれないが、俺はまたもここに惹かれた。それは今で言う炎上商法のような分かりやすく程度の低いものなどとは明らかに違う、何か強くて真摯なものを感じた。
とにかくライブが観てみたくて仕方がなかった。2005年12月24日、gauge means nothingの解散ライブには行っていたしkillieも出演していたのだけれど、俺が会場についた時は既にkillieの出順は終わっていて観れなかった。その時に観ていたら今とはまた違った印象になっていたのだろうな、と思うと音やバンドとの出会い方の妙を感じなくもない。そんなこんなで初めてkillieのライブが観れたのは2006年9月10日、群馬県前橋市のアケラシーというライブハウスだった。対バンはakutagawa、the north end、heaven in her arms、forget me notで、物販で初期henoaのカセットテープ音源を買ったことや、ヘブンが2〜3曲やった後ドラムのOKB氏の腕が故障してしまい泣く泣く途中でライブを終えてしまったことなどもよく覚えている。そんな中での、いよいよ観られるkillie。出順前にフロアで待機していると何やらニュース音声の様なものが流れ始める。ステージ上ではなぜか蛍光灯が設置されていく。異様な雰囲気。さっきまでは確かに無かったなんだかイチゴのような甘ったるい匂いまで流れ始めた。俺は背が低いのでフロア一番後方の高い台の様なものの上を一緒に来ていた友人から場所譲ってもらいそこに立ち待機する。演奏が始まる。途中MCは無く、確かこの時のセットリストは「地下から〜」の3曲に加えて「一億分の一」の4曲。「一億分の一」はまだ音源としてリリースされていなかったが、それでも覚えているくらい衝撃的な楽曲だった。途中観客は殆どが棒立ちで、俺には何かワケのわからない凄まじい現象、例えば災害や大事故などを目の当たりにしてしまって立ち尽くすことしか出来ない群衆のような、そんな風に見えてその光景もすらも印象的だった。トンデモナイものを目撃してしまった。演奏や楽曲はもちろん、SEや蛍光灯によるステージ上の演出、更には匂いで嗅覚までコントロールしようとする作り込みの凄まじさやその厳格さに度肝を抜かれ、また更に惹かれた(匂いはとんだ勘違いだったことを後に知ることになる。あれは何だったんだろう?)。

ただの1ファンとしてkillieのライブにも足繁く通うようになり、だがメンバーに話しかけたりなどはせずいたような頃、ある衝撃的な告知が打たれる。ampereとla quieteの同時来日ツアー、それもオーガナイズはheaven in her armsとkillie。狂気乱舞した俺はさらなる一文を見つける。「このツアーに際してドライバーや料理を作ってくれる人などの協力者を募集する」と。確か当時、killieはその活動内容などから2ちゃんねるなどで酷く叩かれていてその戦いは加熱していく一方、一般小市民な俺からしたらその内容に思うところはあっても恐ろしくて踏み込めないような所まできていた。だがその募集は明らかにまだ見ぬリスナー達との対話を求めていた。その事も実際に明文化していたと思う。当時音楽友達などもおらずまだバンドすらやったことがない何も持っていない俺みたいなのが参加したところで迷惑をかけてしまうんじゃないか、そんな軽い気持ちで参加していいものじゃ無いんじゃないか、そもそもメチャクチャ怖い人たちなんじゃないか。それでもこのメンツからして凄まじいツアーに携われること、killieとは何か?激情ハードコアとは何か?を知れるんじゃないかと、散々ビビリ倒しながらも震える指でドライバーとしての参加希望メールを打ち、送信した。
結果を先に述べると、それはそれは散々なものだった。元々極度の人見知りな上に悪い意味で信者化していた俺は上手く話すことが出来ず逆にメンバーやスタッフに気を使わせてしまったり、バンドをやったことが無かったので機材搬入すらちゃんと手伝うことが出来なかったり、自分の人間力の無さを嫌というほど思い知った。特にドライバーとしての初仕事として大きなバンを下北沢の細い路地裏から出すとき運転しきれず代わってもらってしまった時や、仙台公演にてステージ上で本気の喧嘩が始まった時何も出来ず立ち尽くしていた時、同時に参加した知人が仲良さそうに周りと打ち解けているのを見た時などは死んでしまいたくなるくらい情けなくて悔しかった。が、もう会えなくなってしまった人はいるもののこの時繋がった縁は今でも続いていたりするし、このツアーのどの公演も素晴らしいものだった。どの瞬間も覚えている。当時の悔しさから得たものも死ぬほどある。そしてバンド側が求めた対話に俺はとうに及ばなかっただろうけど、それでも俺は相手も人間なのだということを肌で知ることが出来た。あんなにもステージやネット上のテキストなどでは異様なまで蠱惑的に黒く光り輝くkillieもしょうもないジョークで笑い喧嘩もして酒飲んでダベる、ただの人間だった。

その後、リベンジとばかりにドライバーとして遠征に参加したり、自分でも人生初のちゃんとしたバンドを始めたりしてバンドとは?とか考えたりするようになる。その過程で普通なら交わらないであろう人と交わり友人になったり、普通なら考えの及ばなかったであろうことを考えたりするようになる。悪い意味でkillieの信者となっていた俺はこの辺りから少し見え方が違ってくる。killieが主張していることやその活動は何なのかを出来るだけフラットに見るよう心がける。その上で、なぜ俺はこんなにもkillieに惹かれるのか?を考える。その後にリリースされた、「キリストは復活する集」ともいえるコンクリート詰めの音源ではその特異な装丁に加え、不可侵にしておきたいような宗教的なテーマ、またいつにも増して過激で直接的な表現が並ぶ歌詞。正面からただ直に受け取ればそれはもう悪辣で、メディアなんかには決して乗せられないような内容の表現も。ただ、直に会い話した俺から見て、これがそのまんま戦争賛美だったり人の死を願ったりアンチキリスト教だなんてそんな安易過ぎる表現に見えないことは明白だった。
強烈なステイトメントや楽曲やその歌詞、活動内容などに目を引かれがちだが、killieはスターでも神様でも悪魔でも何でもない、人間だ。そしてその主張全てには「人間としてより良く生きること」が前提にあるのである。過激で露悪的に見える内容のものも全ては逆説的にその前提の元に行われている。これはkillieのHPでもしっかり明文化されている(ダイアリーのページ、2009年3月1日の記事)。その表現が過激に見えるような方法論をとっているのは、このクソッタレな世の中で生きるためにはコレしかなかったという怒りと悲哀、どうしようもなさからくるものであるように思われる。まさにハードコアバンド所以だ。生きるためのハードコアパンク。問題から逃げず無視せず真摯に考え続け、もがき、生きるためにやる。これだから俺はkillieが大好きなんだ!と。


…俺はこの世に正しいことや確実に正確な答えっていうのは殆どないと思ってます。数字くらいかな?正確なのって。この正しさってのは結構怖くて、絶対的な正義って揺るがないから安心するんですよね。表現にしてもそうで、愛は勝つ!正義は勝つ!とか言い切って答え貰えるのは安心するんすよ。あとスッゲー楽。自分で考えなくてもいいし。正義の名の下の暴力なんて国家間から個人間でのSNSでの争いとかに至るまでしょーもないのが幾らでも横行してるよね。そこのところ、killieは正しくないからこそ好きなのかもね。killieの歌詞とかは完全無欠の純然たる正しい答えなんて絶対にくれないの。誰がどういう答えを想定してもおかしくない表現もするし、ときには間違った表現をあえて使ったりもする。その上で、じゃあこの間違いをどうするのか?という問いかけ。人生は絶え間ない思考の連続、考え続けろ、という。もうやってることは殆どダークナイトのバッドマンですよ。完全にダークヒーロー。正しくヘイトをバラ撒くってのはこういうことなのかもね。

てことで改めてkillie初期音源編集盤です。あえてレビューとかではなくこのクソキモ文章にしたのは、このCDの中身としてPDFに記載されている(発売から1年以上経ってるしネタバレしてもいいよね?ダメかな?)3LA水谷氏によるライナーノーツが凄まじく良くて「あ、これ読めばもう完璧じゃん…もう書くことねーよ!」てなったからです。初期のバンドの歴史や起こったこと、その経緯や内容、killieとは何なのか?を出来るだけ客観的に立ち返るのに最適過ぎる文章なので、是非手にとって中身を確認してみてください。
収録曲としては「地下から〜」の3曲、kaospilotとのスプリットに収録されるはずだった2曲、off minorとのスプリットから1曲、それにキリストは復活すると新曲、la quieteのカバーの全9曲を収録。使われている音源は全て録り直しされていて、2009年頃にはレコーディングし終わっていたもののようで、噂通り凄まじい紆余曲折があったのだろうなと思い起こされます。初期音源集ではありますが、off minorとのスプリットから1曲、salvationから出ていた12''の2曲が収録されていないのは明らかに意図的でしょう。これらの曲は現在ライブでも大幅にアレンジを変えて演奏されているので、今回収録されなかったのはこれはまた先に出るであろう音源に収録される予定あるのかな!?と期待感しか無いですね。このCDに収録されている曲は大幅なアレンジ変更無いですが、一部歌詞が変わっていたりする部分もあり、この辺の遍歴を考えてみるのもまた楽しみの一つです。ともあれ、長らくその音源の殆どが廃盤で正規に触れる手段が無かった現状が解消されるのはただの1ファンとして本当に喜ばしい。killieとは何なのか?が少しでも多くの人に届くことを願います。

こう見るとまだクソキモ信者だよなー。まあでも誰が何言ってても絶対的に正しいことなんて無いと思うのでkillieの活動についてももし間違ってると思ったら間違ってる!て感想抱けるくらいにはなったかな?そんでそしたら何がどう間違ってるのか、なぜそう感じたのかを考えるくらいはしていきましょうね、とか。なんかそんな感じ。
ここに書いた文も半分以上嘘で間違ってるので。答え探しは各々でシクヨロです!
特典ステッカー、特典DVD付き。

・ 型番
killie-666
・ 販売価格

1,111円(内税)

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